最初
トトが死んだのは2002年8月9日の夜でした。
何をしていいのかわからず、箱の中で眠らせたトトを隣に置いたまま
パソコンを開き、ただ眺め、また泣き、思いにふけり、そしてまた涙を流し…。
眠れないまま夜を明かしました。
短い夏の夜が終り、またいつもと同じような1日が始まろうとしていました。
薄青い光がぼんやりと立ちこめる庭にトトと出ました。
トトはそのとき、初めて庭に出たのでした。
その年、暑い暑い夏だったと言うのに、その朝は不思議なくらいにたくさんの花が咲いていました。
涼しい澄んだ空気の中、清らかな花たちが、静かに私とトトを取り囲み、見守っているようでした。
私はそのままトトと散歩に出ました。
そしてトトと一緒に朝焼けを見ました。
なんて美しい空なのでしょう。
なんて優しい風が吹くのでしょう。
その荘厳さに胸を打たれ、はらはらと涙が落ち、トトの空色の体に玉になってこぼれました。
群青の空は、やがて薔薇色に染まり、トトの羽を虹色に光らせました。
そして薔薇色の雲は純白へと輝きだし、空は深い青へと変わり、明るい朝がやってきたのでした。
家に帰り、私は庭の花をいっぱい摘みました。
その芳しい花々でトトを包み、庭のひと隅に埋めました。
紫陽花と、ブールドネージュやオダマキの間。
リビングからすぐに見える場所に。
目印に小さな鉢を置きました。
翌日、友だちがトトのお墓まいりに来てくれました。
トトをとてもかわいがってくれた優しい友だちは、
「トトちゃんの羽の色に似ていると思って。」と青い花の苗をくれました。
サルビア・コスミックブルーの澄んだ深い青を見て、心が落ち着きました。
美しいその花を、トトのお墓の上に植えると、そこは悲しいお墓ではなく
可憐な花畑のように見えました。
そうだ。ここに青い花をいっぱい植えよう。
ここを青でうずめよう。
宇宙の青、空の青、トトの羽の青の花でいっぱいにしよう。
トトが寂しくないように。
いつでもトトと会えるように。
こうして、トトのブルーガーデンは始まったのです。
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真夏だと言うのに、
この朝はこんなにたくさんの花が咲きました。
トトが寂しくないように、
かわいい花たちが寄り添ってくれました。 |
小さな鉢の墓標。
花を供えても、ちょっと寂しかったね。。 |
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トトのブルーガーデンの最初の花。
友だちがくれた、サルビア・コスミックブルー。 |
それから青い花を見るたびに苗を買っていました。
自分で種まきした花たちも、青い花はみんなここに植えました。
秋が来るまでに、アメリカンブルーとブルースター、アゲラタムとトレニアがここで咲き始めました。
10月、友だちと行った夕方の屋上庭園で、ひとつの小鳥の置物を見つけました。
本当ならペアで売られるはずが、なにがあったのか1羽だけになって棚の片隅においてあったのです。
青銅色のひとりぼっちのその小鳥を私は買い、墓標がわりの小さな植木鉢の上に置きました。
茂った秋の花々に埋もれた小さな鳥は、とっても可憐で、でも凛々しく見えました。
花の中で、トトとお話しているかな。
秋が深まった頃、ここにたくさんの球根を植えました。
春になったら苗を植え付けるために、青い花の種もたくさん蒔きました。
夏に植えた花たちは咲き終わり、トトのブルーガーデンは、また静かになりました。
鉢の上に羽を休めた青銅色の小鳥だけが、土の上に色を添えていました。
こうして2002年は終わろうとしていました。
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アメリカンブルーは真夏の空の色 |
| ビロードのように光を吸い込むトレニア |
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ブルースター(オキシペタルム)。
涼しげに光る星をばらまいたよう。 |
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サルビア・ガラニチカにサルビア・アズレア
サルビアには青い花が多い |